失敗から準備の達人へ。登山での忘れ物体験が教える、仕事と日常のリスクマネジメント
登山を始めたばかりの頃や、慣れてきた頃に、ついやってしまいがちなのが「忘れ物」や「準備不足」です。自宅では当たり前に使っているものが、山では命に関わる可能性がある。そんな「ヒヤリ」とした経験を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
私も経験があります。早朝出発で慌ててパッキングを終え、いざ山に入ってから「あ、ヘッドライトを忘れた！」と気づいた時。あるいは、天候が急変し、持ってきたレインウェアが不十分で体が冷えてしまった時など、小さな失敗が大きな不安や困難に繋がることを痛感しました。
しかし、こうした登山での失敗経験は、実は仕事や日常生活における「準備の重要性」や「リスクマネジメント能力」、そして予期せぬ事態に対応する「リカバリー力」を養うための貴重な学びとなります。今回は、登山での忘れ物や準備不足から得られる教訓を、どのように日常に活かせるのかについて考えてみましょう。
登山での小さな失敗が教えてくれること
登山における忘れ物や準備不足は、単なる不便では済まされないことがあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。
- ヘッドライトを忘れた: 下山が遅れた場合、暗闇の中での行動となり、道迷いや転倒のリスクが格段に高まります。
- 防寒着やレインウェアが不足している: 標高の高い山では、急な気温低下や天候の変化で低体温症のリスクが高まります。
- 行動食や水が足りない: 体力低下や脱水症状を引き起こし、安全な行動が困難になります。
- 地図やコンパス、GPSの充電を忘れた: 道迷いのリスクが増大します。
こうした経験を通じて、私たちは「万全の準備がいかに重要か」を身をもって学びます。そして同時に、「もしもの時にどう対処するか」というリカバリーの視点も養われるのです。
失敗経験から育む「準備の重要性」
登山前に装備リストを作成し、一つ一つ確認することは、忘れ物を防ぐための基本的なステップです。地図でルートを確認し、天気予報をチェックし、必要な装備を準備する。この一連の行動は、まさに仕事におけるプロジェクトの計画やタスク管理に似ています。
仕事で大切なプレゼンの資料準備を怠ったり、会議に必要な情報を集め忘れたりすると、その後の進行に大きな影響が出ます。納期管理を徹底せず、必要な準備を後回しにすると、締め切り直前に慌てることになります。
登山での「準備不足がリスクに直結する」という明確な学びは、仕事においても「丁寧な準備が成功と効率に繋がる」という教訓として活かされます。チェックリストを作成する習慣、情報のダブルチェック、リスクを想定した予備の準備など、登山で身につけた準備の姿勢は、日常の仕事の質を高める基盤となります。
予期せぬ事態への「リカバリー力」を磨く
それでも、想定外の事態は起こり得ます。登山で忘れ物をしてしまった、あるいは計画通りに進まなくなった時、私たちはどう行動するでしょうか。
冷静に状況を把握し、手持ちの装備や情報で最善の代替策を考えたり、無理をせずに計画を変更したり、時には引き返すという決断を下すことも必要になります。パニックにならず、「今できること」に集中する力が求められます。
これは、仕事で予期せぬトラブルが発生した際の対応力に直結します。システム障害、顧客からの緊急対応、プロジェクトの予期せぬ遅延など、計画通りにいかない状況は日常茶飯事です。そんな時、「どうしよう」と立ち止まるのではなく、「現状をどう把握し、何を優先すべきか、利用できる資源は何か」を冷静に判断し、代替案を実行するリカバリー力は、困難を乗り越える上で不可欠な能力です。
登山でのリカバリー経験は、「完璧でなくても、最善を尽くすことで道は開ける」という自信にも繋がります。
登山に学ぶリスクマネジメントの視点
登山では、天候の急変、落石、転倒、野生動物との遭遇など、様々なリスクが潜んでいます。これらのリスクを事前に想定し、対策を講じること、それがリスクマネジメントです。ハザードマップを確認する、予備の食料や水を用意する、悪天候の場合は中止する勇気を持つ、といった行動がこれにあたります。
この「リスクを想定し、対策を講じる」という視点は、仕事においても非常に重要です。プロジェクトの進行において考えられる潜在的な問題を洗い出し、それぞれに対する対策や回避策を事前に検討しておくこと。これが、予期せぬ事態が発生した際のダメージを最小限に抑え、目標達成の確実性を高めることに繋がります。登山で培ったリスクへの感度と対処法を考える習慣は、ビジネスシーンでの危機管理能力を高める助けとなるでしょう。
日常への活かし方：準備とリカバリーの習慣化
登山での経験を日常に活かすために、以下の点を意識してみてはいかがでしょうか。
- チェックリストの活用: 仕事のタスクや日常生活の準備（例: 出張準備、旅行準備）において、簡易なチェックリストを作成する習慣をつける。
- 「もしも」の想定: 計画を立てる際に、「もし〇〇が起こったらどうするか」と少しだけ立ち止まって考えてみる。
- 情報の整理とアクセス: 仕事で必要な情報や資料を整理し、すぐに取り出せるようにしておく。
- 冷静な状況判断: 問題が発生した際に、感情的にならず、まずは状況を正確に把握することに努める。
- 代替案を考える習慣: 最初のプランが難しくなった場合に、「他にどんな方法があるか」と柔軟に考える練習をする。
登山での小さな失敗や準備への意識は、仕事や日常生活における大きなリスクを回避し、困難な状況でも冷静に対処できるレジリエンスを育むための強力なツールとなります。山で得た「準備の大切さ」と「リカバリーの力」を、ぜひあなたの日常に活かしてみてください。